2014年12月27日土曜日

「所得隠し」と言われて重加算税が課されいるようだけど、どうなんだろう。

 2014年12月25日の日経夕刊などでの報道から。
 アルミホイール製造の大手、浜松市に本社のあるエンケイ株式会社会社が、過去5年間で、約11億円の申告漏れを名古屋国税局に指摘され、うち6億円は所得隠しとして、重加算税も課され、修正申告して、約2億円を納付したようです。
 非上場会社なので詳細は不明ですが、報道からは、2013年3月期で、約536億円の売り上げ
 会社のサイトによれば、国内従業員約1000人海外事業所14社従業員約6000人の規模のようです。
 
 報道による事実関係は、次のとおり。
 中国子会社から購入した製品に欠陥があり、約4億円の債権を中国子会社に対して有することに。しかし、これが回収できず。
 他方で、中国の子会社から2010年、2011年の3月期に、約4億円の配当収入を受けることに。
 ただ、エンケイは、香港にベーパー会社を有していたということで、この香港の会社の口座を使って、約4億円の収入を未回収だった債権の分の弁済金として付け替えて受領、処理したよう。
 これをもって、所得隠しとして、重加算税が課せられたようです。
 
 エンケイ。サイトをみてみると。
 1992年には、中国の江蘇省昆山市経済技術開発区にアルミホイールの製造販売の会社を設立、2002年には、さらに鋳造用金型等の製造販売の会社を、そして2005年には、広東省佛山市にアルミホイールの製造販売の会社を設立しています。
 その他、アメリカ、フィリピン、インドネシア等にも事業所を有しています。

 海外の関連子会社がらみの経理、税務処理も相当、年季が入っているはずなのに、なぜこんな稚拙ともいえそうな手法での所得隠しをしたのか。
 なぞです。

 非上場会社なので、創業者一族の会社ということなのでしょうが、これだけの規模の会社の経理財務体制がどうなっているのか、気になります。

 大手監査法人系の税理士法人等もアドバイザーにいないとは考えられず。社内の体制がどうなっているのか、気になります。

 にしても。中国子会社からの配当金、益金不算入制度の要件を満たすようにはなっていなかったんでしょうね。
 「所得隠し」と報道されていますが、他に「経理ミス」もあっての申告漏れ約11億円ということなので、「所得隠し」と報道されて重加算税も課せられているらしい約6億円の所得隠しの分も、もしかしたら,大した悪意のない、付け替え、配当金入ってくるなら、未回収金の回収としちゃえ、くらいのものだったのかもしれません。

 この辺り、社内の担当者のレベル、質の問題が大きいのではないかと推測します。
 あまりにも単純すぎて、単なる担当者の無知にすぎない重加算税なのかもという疑念ありです。
 社内での人材育成、スペシャリスト養成は会計分野が重要です。
(おわり)

これは朝日新聞のサイト。図もあります。






 

2014年12月4日木曜日

国税不服審判所の予算

 講演の準備として、そういえば国税不服審判所の予算は年間いくらだったっけ?とググりました。
 「国税不服審判書 予算」

2 
 ピタッとしたものは出てこなかったのですが、上記写真のPDFがヒットしました。

 平成25年の成立予算額です。

 国税不服審判所 年間合計約44億7000万円
 うち、「審査請求の調査及び審理に必要な経費」、約1億4000万円。
 なんでしょう?

 予算のほとんどは、おそらく人件費と思われます。約500名分。
 その他に、1億4000万円。
 審判官、審査官らが現地に赴く際の交通費?英文書類等の翻訳費用? 
 調査のためにどういった費用を使うのか、ちょっとピンと来ません。

 その他。
 「独立行政法人酒類総合研究所運営費」として、約9億6500万円。
 なんでしょうか、この団体。

 ググりました。
 広島にあるんですね。
 
 「酒類総合研究所は財務省所管の独立行政法人として、国税庁の施策を実施するため、酒類に関する技術的な面での業務を行っております。基本的な方針としては、酒類に関する高度な分析及び鑑定を行い、並びに酒類及び酒類業に関する研究、調査及び情報提供等を行うことにより、酒税の適正かつ公平な賦課の実現に資するとともに、酒類業の健全な発達を図り、あわせて酒類に対する国民の認識を深めていただくことを目的として業務に当たっています。」
 
 総勢45名、うち研究職員32名。

 ここが、今年6月頃、大騒ぎになったサッポロの第三のビール「極ゼロ」は、第三のビールじゃない!といった検証・研究をしているのでしょうか。

 この組織の予算とは別に、「酒類業の健全な発達の促進に必要な経費」として、約4億円の予算が成立しています。
 酒関係だけで、国税庁として、約13億円の予算をとっています。
 
 「酒・たばこ」と並び評されることが多いと思うのですが、この「酒」と「たばこ」の今の取り扱いの差はいったい何に原因があるのでしょうか。
 ちなみに、平成25年度の酒税収入は、1兆3740億円のようです。
 この国税の酒税獲得のために、研究費的なものとして13億円をかける意義はあるのでしょうね。よくわかりません。
 
 ちなみに、サッポロは、特別損失として「酒税追加支払額等」116億3900万円を計上しています。関連して、「アドバイザリー費用」が3500万円、その他が1100万円。なんのアドバイザリー費用なんでしょうか。争うべきか否かとして、税理士法人と弁護士法人からのアドバイス費用なのでしょう。


 また、平成25年のサッポロの研究開発費は、約26億円のようです。ただ、国内の酒類事業の研究費としては16億円だったようです。
 
 またしても、だから何?という、ものでした。
 へーっ、ということで。

 たまに、ネットサーフィンではありませんが、政府の公の資料、ネット上の資料を紐解くと、面白いです。
(おわり)

*無心に、研究。



 

2014年11月28日金曜日

「税法に、国税不服審判所は必要か?」






 12月6日土曜日、母校の関西大学で、「税法に、国税不服審判所は必要か?」というテーマで、講演をさせていただきます。
 90分。税法を学ぶ人、税法を使う人にとって役に立つものにしたいと準備しています。


 今回、準備する中で、自分は 何を一番伝えたいのかと自問自答していく中でいきついたのは、「もっと法律を!」というものです。

 経済的合理性はもちろん分かるのですが、さらにレベルの高い税務行政へと進化する必要があるのではないか。そのためには、といったことを考えました。

 聞きに来られている方々の関心事とうまく合うかどうか心もとない限りですが、税法を学ぶ学生の方々へという思いで、より広い視野をとの思いで、話をしたいと思います。
 
 頑張って、成蹊大学の塩澤一洋教授がすすめておられる、デジタル黒板、 iPad Air とMetaMoji Noteを使う予定です。使いこなせるか。練習していきます。

http://shiology.com/shiology/2014/03/3614-140318-ipa.html
 

(おわり) 
*ガジェット、大好きです。数年前に買ったkindle。



2014年11月26日水曜日

国税通則法違反と不起訴処分

1 
 平成26年11月22日の日経朝刊の記事です。
 京都地方検察庁は、調査情報を漏洩したということで書類送検されていた、元大阪国税局職員(47歳)について、不起訴処分とした、というものです。
 不起訴の理由は不明とのこと。


 情報漏洩での国税通則法違反というと、おそらく、国税通則法126条です。
 「事務に関して知ることのできた秘密を漏らし」たときは、「2年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する」とされています。

 検察庁への書類送検、とは。
 刑事訴訟法246条本文、です。
 司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定めのある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
 
 そして、この「事件」送致を受けた検察官が「公訴」を行うか否かを決めます(刑事訴訟法247条)。
 この時、検察官が、公訴をしないと決めたことを「不起訴」処分といいます。

 報道の、元大阪国税局職員は、「不起訴」とされたということは、刑事裁判にはかけられないこととなったということです。
 ですので、懲役刑あるいは、罰金刑に処せられることはありません。

 では、どのようなときに、検察官は、「不起訴」とするのでしょうか。

 刑事訴訟法248条です。
 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
 これはら、「不起訴」の理由の一つの「起訴猶予」というものです。
 
 そのほかに「不起訴」とされる理由は、「嫌疑不十分」というもがあります。
 検察官が、公訴しても、有罪判決となる見込みはない、証拠が十分ではないという場合もまた、不起訴処分となります。

 今回の元大阪国税局職員の不起訴処分の理由は明らかてはないということですが、「元」職員という報道からして、おそらく捜査を機会に退職しているのだと思われ、となると、本人自身も嫌疑については争ってはおらず、退職までしていること、事件そのものもお金をもらってといった事柄でもなく、比較的軽いと判断されたのではないか、「起訴猶予」による不起訴処分てはないかと推測されます。
 
 47歳ということで、おそらく、高校を卒業した18歳からか、あるいは大学を卒業した23、24歳から、20年以上は国税局で勤務してきた方だと思われます。
 退職して、いったい仕事、収入をどうするのか。
 退職理由がこのような嫌疑によるものだとしたら。
 ただ、能力のある方なら、長年にわたる税務調査等の経験、知識は、退職後も、その税務の分野で役に立つと思います。
 
 ちょっとした気の迷い、何かの誘惑、勘違い、理由・動機はわかりませんが、人生は続くので頑張って欲しいです。

 そして。
 職場としての再発防止策が問われるのでしょう。大阪国税局のこうした報道が一定期間、絶え間ないような気がするのは気のせいなのか。なぜなのか、不思議で仕方ありません。
 職場に対する不満、給料に対する不満、将来に対する不安?

 どのような職場においても、他人事ではないと思います。
 飲酒運転と同様、厳罰化が効果的なのかどうかはわかりませんが、不起訴処分の理由が起訴猶予だとしたら、それでいいのかという気がしないでもありません。おそらく、漏洩したとうされる「秘密」も、大した「秘密」ではなかったのだろうと思われます。

 京都ということと、情報漏洩ということで、10月23日のこの事件かなとも思うのですが、
 http://songjing55.cocolog-nifty.com/_yoshikomatsui2014_/cat23761237/index.html
 国家公務員法違反、逮捕、48歳、ということで、微妙に違います。
 今回の不起訴処分、いったいどの件のことなのだろう。
  
 もし、10月23日逮捕の事件のことだったとしたら、京都府警による、捜査は本丸にたどり着けなかったということか。
 ただ、逮捕されていたのなら、身体拘束の期間制限上、勾留期間は最長20日間なので、もっと早くに起訴、不起訴の処分が出ているはず。
 別件なのでしょう。
 ということは、京都の方で、なにかがうごめいてるということか。 

(おわり)

*しろくまは見ている!



 

2014年11月20日木曜日

米国子会社取引~商船三井の場合と「事実認定」の「技術」〜


 11月20日、今朝の日経朝刊に、これまた小さく小さく報道されていて、知りました。
 日経
 「商船三井は10年、税務当局から米子会社との港湾作業契約の料金が不当に高く、子会社への実質的な寄付行為にあたるなどと指摘され、49億円を追徴課税された。通常の商取引とする商船三井の異議が認められ、税金の還付が決まった。」
 
 異議申立てで課税処分が取り消しとなったのかと思いきや、商船三井の発表によると、国税不服審判所の審判によって課税処分が取り消されたようです。 

 2010年の課税処分。
 ただ、そもそもの更正処分は、移転価格税制に基づくものもあったようで、ただ、こちらは2013年2月、日米の税務当局による相互協議での合意により、二重課税部分とされた金額は、課税所得とされた部分の75%が減額され、商船三井もこれを受け入れていたようです。

 残るのが、寄付金課税ということで、この点を争っていたところ、国税不服審判所は処分を取り消したようです。

3 
 港湾作業
 確かに、特殊な業界だと思います。詳しくは知りませんが、放送業界などと同様、独特の取引慣行等のある業界ではないかと考えられます。
 放送業界と同様、他に似た、比較する業種がないものです。
 そこで「港湾作業契約」の対価の適否が問題となったようですが、結局、国税局の方が、「事実認定」があまかったということなのでしょう。
 
 課税処分が、国税不服審判所の裁決やあるいは裁判所での判決で取り消される場合というのは、結局、課税処分をした当局が主張する「事実」が、証拠上、認められないということです。

 この「事実」の認定は、長年の経験や直感で決まるものではありません。
 自著「税理士・弁護士のための不服手続申立ガイド」でも強調しているところですが、審判も判決も「手続」です。
 課税要件となる「事実」があったというためには、税務調査職員が納得すればいい、上司の税務署長が納得すればいいといったレベルのものではありません。

 結局は、「裁判官」が納得するかどうかです。
 国税不服審判所においても、判断は、第三者的機関として、裁判官的なものの見方をするように務められているかと思います。
 
 その行き着く先を考えたら、税務調査段階でも、課税をする税務職員らが意識すべきなのは、課税要件となる事実が認められるか否か、「裁判官なら、この証拠状況でどう判断するだろうか?」ということです。
 
 そして、これを実践するためには、実際の裁判手続において、どのような証拠が、どのように評価され、どのような経験則がもちいられるのか、裁判官は当事者、担当者らの証言の内容をどのような手法でもって判断するのか、そうした「事実認定のための技術」を知る必要があります。
 弁護士や検事といった法曹実務家においては、ごくごく当たり前のことが、よくよく考えたら世間一般では当たり前ではなかった、これは特殊な訓練のたまものともいえる特殊な技術だったということに国税不服審判所で働いてみてあらためて気づくことができました。

 現在、税務署、国税局において、末端の税務職員にまで、このような「事実認定のための技術」が教育されているのでしょうか?つまり、証拠の評価です。裁判所では,この「証拠」といわれるものはどのように評価されるのか、とういことです。

 よくはわかりませんが、納税者が徹底的に争った場合に、事実認定のところでこけて課税処分が取り消されている判例等をよむと、おそらく「体系的な研修」はそれほど徹底されていないのではないかと思われます。

 国税職員や、あるいは税理士さんは、もっと民事訴訟法を学んだ方がいいといった旨を自著に控えめに書いた真意はここにあります。

 「手続における事実認定」は、「技術」です。

 訓練がないと、実用には耐えられません。
 しかし、訓練すれば、裁判官が考えるように考えることができます。
 そこで、税務調査の段階において、税務調査職員と納税者との間に、証拠を巡る発展的な緊張関係が生まれれば、日本の税務行政の質がさらにあがり、結局は納税者もハッピーになる、そう夢想しています。

(おわり)

*海には海の掟がある。


2014年11月19日水曜日

「納税者の資産運用が国際化している」~相続税の調査の状況~

 平成26年11月19日の日経朝刊で知りました。
 国税庁が、平成25事務年度(平成25年7月~平成26年6月)の相続税に関しての調査の状況をまとめ、発表したようです。
 

 実地の調査件数は、約1万1000件です。うち、遺産が海外にあったという海外関連のものは、753件
 
 これは地域的には、どこの相続が多いのかが気になるところではあります。おそらく、東京、名古屋、大阪(関西)でほとんどを占めるのかとは思います。

 この点、日経では次のように報道されています。
 「国税庁は背景として『納税者の資産運用が国際化している』と指摘している。」
 
 これは、私が国税不服審判所、特に大阪支部は神戸支所にいた1年7ヶ月ほどでも、ひりひりと肌感覚で実感したことです。

 国税審判官になる前、大阪で、相続事件を多く手がけ得意とする弁護士として仕事をさせていただいていました。
 その当時は、まだ海外資産が登場する相続は、相続税を何億円と納める事案であっても、ほとんどありませんでした。

 しかし。
 平成25年の時代。億の相続税を納めるわけではない場合でも、海外に不動産をもっていたり、あるいは、預貯金、証券口座をもっていたりするケースは普通にあくのかもしれないと実感するにいたりました。
 市販の国税税務職員職員録を見れば明らかですが、確か、西宮税務署などには、国際なんとかかんとかといった役職があったかと思います(今、手元に職員録がないので不確かですが。)
 
 ネットを見ると、関西でも、その後、相続業務を派手に広告している法律事務所・弁護士のサイトが多くあります。
 ただ、その中でも、平成14年、弁護士として独立して、事務所を開設した当初から、相続税、また相続税だけではなく、法人税の知識と経験も「相続」業務には必須であろう、より依頼者の利益に沿った活動をするならばとの思いがあり、税務には力を入れてきました。というか、入れざるを得ませんでした。
 相続に関与しながら、税務の無知のために、あとで依頼者にとんでもない負担を負わせている事例もいくつか見ました。
 
 ただ。平成26年。
 もはや、相続には、税務だけでなく、いや税務にも関心を払い関わる以上は、相続事案の相談には英語は必須との思いをもつにいたりました。

 そこで。
 平成26年7月、国税審判官を退官後、当初、新たに一人で法律事務所を設立するつもりだったのですが、国税庁の組織の力を感じたことから、弁護士も、弁護士一人の法律事務所の時代ではないと考え、さらには、共同経営パートナーとしては刺激しあえて、弁護士としての実力を高めあえる、自分とは異なるタイプの弁護士と、ということで、アメリカの大学に留学し、ニューヨーク州の弁護士資格も有する神川弁護士と、新たにMATSUI&KAMIKAWAとして、法律事務所を設立するにいたったものです。

 弁護士に相続、遺言の相談をして、
 税法は全くわかりません、
 海外資産?英語がわからないし、海外の取引実務は全くわかりません、
 では、自身が本来提供できるはずの質の高い法律サービスは提供できません。
 そうした思いから新たに設立したのが、  
 MATSUI&KAMIAKAWAです。

 相続税の実地調査で、海外資産関係となった753件。
 税務調査の際、納税者にとって適切な代理人活動、防御活動はなされているのでしょうか。
 法律税務英語
 気になります。
(おわり)

ロサンゼルスにある、ハリウッドボウルという野外ステージです。2012年7月、訪米時、ロサンゼルスに暮らす友人に案内してもらいました。





2014年11月18日火曜日

関税法違反〜実は、よくある?〜

 平成26年11月14日の日経夕刊の小さな、小さな報道記事です。
 「1450万円脱税で在宅起訴」

 よくある報道ですが、おやっと思ったのは、「関税法違反」でということです。
 報道による、「脱税」の手法はとういと。
 「衣料品などの輸入額を過少申告する手口で、関税など計約1450万円を脱税したとして」ということです。
 起訴されたのは、衣料品卸売商の法人とその社長です。

 脱税、大阪地検が起訴、そいうことでよく報道されるのは、やはり法人税が圧倒的に多いです。たまに、巨額の相続税の脱税報道があるかどうか。
 ただ、やはり当然、関税法違反もある。
 
 関税ほ脱犯 関税法110条です。


 過去には、平成25年4月、「差額関税制度」を利用し関税約21億円を脱税したとして起訴された食肉販売会社の社長が、懲役2年4月、罰金1億円の実刑判決を受けています。

 過去、輸入豚肉に関し、「差額関税制度」を利用した脱税が多発していました。

 「平成24事務年度の税関による関税及び内国消費税の徴収状況~事後調査及び犯則調査の結果~」関税局調査課長
 

 
豚肉の差額関税制度について 平成17年7月 農林水産省 
 


 関税、豚肉、脱税といったキーワードでグーグル検索を実行すると、いくつもいくつもいくつも、事件報道等がヒットします。

 TPPがどうなるのかは分かりませんし、日本が農産物等についてどのような方向にもっていこうとしているのかはよく分かりませんが、ともかく、現在、輸入大国ともいえる状況のなか、「関税」に無関心ではいられません。
 
 上記の脱税の報道は、単純な、輸入額の過少申告のようですが、関税ならではの条文等曖昧さが今後、さらにクローズアップするかと思われます。

 大手法律事務所はともかく、対応できる法律実務家がいったいどれほどいるのかとなると、心もとない限りかもしれません。

 まあ、まずは、輸入する企業の意識、いわゆる社内の法令遵守のチェック体制の問題です。
 
 

                                 (おわり)

2014年11月12日水曜日

また?国税OBの税理士の逮捕報道…「顧問税理士」の淵。

*名古屋。夜、クロスバイクで激突し、2mふっとんだ障害物。
 反射板がついておらず。道路管理責任を問うて名古屋市を訴えようかと思いました。
 
 平成26年11月11日付の日経夕刊の社会面の記事で知りました。
 これは産経新聞のネット記事。
 
 

 記事によると、関係する宗教法人からの架空の仕入れを計上するなどの手口で、約2億2200万円の所得を隠し、法人税約6400万円を納税しなかったという法人税法違反の罪で逮捕されたようです。
 会社自体は、平成22年4月に設立、翌23年6月末には解散ということで、約1年間で、いわゆるアラ稼ぎをしたようです。
 ただ、特商法違反ということで、消費者庁からも勧誘販売で6月、通信販売で3月の業務停止命令を受けていたよう。
 
 代表取締役の経営者だけでなく、「大阪国税局OBで同社顧問税理士」、47歳の方も逮捕されたよう。
 47歳で、退職していて税理士というと、税理士試験組でないのなら、40歳過ぎで税理士資格が取れる勤続要件を満たしてから国税局を退職しているはずなので、税理士になってからもまだ数年、4、5年くらいではないでしょうか。
 47歳。働き盛りです。
 
 税理士も深く、この脱税に関わっていたという証拠がなにかあったのでしょうか。逮捕されたということは、大阪地検特捜部が裁判所に逮捕状の請求をし、裁判官が逮捕の要件をみたすとして、逮捕状を出し、それが執行されたというだけなので、まだまだ実際のところはわかりませんが。
 
 なんらかの形で、架空経費計上にまで、税理士が関わっていたのでしょうか?
 そうした、所得を隠すやり方を指南していたというのなら、問題ですが、普通はそこまで関与することはないはずです。宗教法人を絡ませていたということのようなので、さらに特殊なやり方がされていたのかもしれませんが、架空経費計上といったやり方くらい、誰でも知っています
 経営者も、わざわざ特別な報酬を支払って税理士の指南を受けるほどのことでもないでしょう。
  
 となると。
 通常、税理士が関わるは、月次の経理か、申告のときです。
 また、法人税法違反となると、法人税の申告の際に、明らかに架空経費を計上して所得を減らしているということがわかる事実を認識し、また関与していたというような事情があるとして、逮捕されたということなのでしょう。
 
 この顧問税理士の報酬は、いったいいくらだったのでしょうか?
 通常よりも多額であれば、そうした「特殊な関与」費用も含めてのものだったといえる可能性も高まります。
 しかし、ごくごく普通の税理士報酬にすぎなかった場合。
 「顧問税理士」だから、この脱税申告にも、「当然」関与していたといえるのか。
 この「関与」も、どの程度のどういった行為・認識であれば、「犯罪行為」としての関与といえるのたか。
 ごくごく普通の税理士報酬にすぎない場合に、自らの社会的生命をかけて、これほどの大きな脱税事件に自ら関与するでしょうか?動機がありません。

 どの程度の関与で「顧問税理士」が法人税法違反、所得税法違反等の脱税事件で逮捕されているのか。
 この辺りの線引きがはっきり見えないと、怖くてうかうか、新規設立企業の「顧問税理士」なんてできなくなりますね。
 本当は争える事案でも、初めての逮捕、身柄拘束、勾留、取り調べで、疲労困憊し、弱気になって、「関与」を認め、有罪答弁をしているケースもありそうな、なさそうな。
 
 続報を追っていきたいと思います。

追記1
 ヤフーニュースにさらに詳しい事柄が報道されていました。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141112-00000516-san-soci
 この顧問税理士の方は、平成21年7月に国税局を退職しており、やはり税理士5年目程度のようです。
 また、宗教法人は、三重県菰野にあった休眠状態の宗教法人を買って、今回の架空取引がおこなわれたとのこと。
 宗教法人については、まあ、「開運商法」をしようとしていたから、購入時はその商売目的で購入したにすぎないかもしれませんが。
 逮捕された顧問税理士は、代表者らと「共謀」して、架空の取引額を決めていたとの報道。
 事実はこれからですが、深く取り込まれてしまったのかもしれないですね。まだ若いのに。税理士になってまだ5年なのに。自己防衛ができていなかっただけなのでしょうか。
 わかりません。
 にしても。これらの報道からだけだと、稚拙な脱税手法のように思えます。税理士の関与が必要だったのでしょうか。不思議。

追記2
 弁護士になる前、司法試験に合格した後、当時は2年間の司法修習期間がありました。司法修習生の特権として、いろいろな法律事務所を訪問し、先輩弁護士の話を聞く機会が多くありました。
 その時お聞きした言葉でずっと残っている言葉を思い出しました。
 「わたしは、依頼者と『心中』はしない。」
 弁護士にとって、依頼者は一人ではありません。一人の落ちていく依頼者がいたとき、どこまで支えるのか。心中したら、他の依頼者に迷惑です。
 税理士も同じだと思います。
 なぜ、「顧問税理士」ということで、代表者と一緒に逮捕されるまでに関わってしまったのか。あるいは、嫌疑を受けるほどに関わったのか。
 脇が甘かったということなのでしょうか。
 まだ、逮捕されたというだけですので、事実はこれからでしょう。

(おわり)
*数年前に食べた、タリーズコーヒーのパンケーキ。


2014年11月7日金曜日

税務調査の数字を見る

*以前の依頼者の方から、再開業祝いにと頂いた焼酎です。グラスワインで飲むものだとか。

 国税庁は、11月、「平成25事務年度 法人税等の調査事績の概要」を発表しました。

 国税庁の「事務年度」とは、7月1日から6月30日までですので、これは、平成25年7月から平成26年6月までの、法人税・法人消費税・源泉所得税に関する1年間の調査の状況を国民に報告したものとなります。
 ちなみに人事定期人事異動の日は、7月10日です。

 国税庁の組織としては、国税庁長官をトップに人員は5万6000人います。これを多いとみるのか、少ないとみるのか。
 このうち、税務署、国税局において、法人税の調査等を担当する人は、査察部の人も含めていったい何人ほどになるのでしょうか。
 そのおそらく数千人の人らで、「実地調査」として、納税者のもとへ行き調査をした件数。
 しめて9万1000件だったようです。前年比97.2%。
 うち、非違のあったもの、6万6000件。
 2万5000件ほどは、申告納税主義のもと、適切に申告していたということになります。
 これを多いとみるか、少ないとみるか。

 いすれにしても、脱税のやり得が許されるとなると、真面目に申告納税しているのが馬鹿らしくなるというのが世の常ではあるので、コツコツと実地調査してもらって、こうして非違行為をあぶり出してもらう、課税の公平を守るということで国税庁ががんぱってくれているから、まだ日本の税収が維持されているといえます。
 がんばれ、国税庁!

 不正発見割合の高い10業種というのも発表されています。
 その中でも、1件当たりの不正所得金額がもっとも高いのは、パチンコです。不正所得金額、1件で5000万円を超えています。これは、永遠にいたちごっこなのでしょうか。


 
 その他、海外取引法人にも国税庁は目を光らせています。
  実地調査件数、1万2000件
  非違行為の発見は、うち3000件。この申告漏れ所得金額は、1783億円とのこと。1件当たり約6000万円です。
  英文の契約書が絶対に出てくるでしょうから、調査する国税職員も英語を読めないと、しかも取引実務の英語を読めないと、調査もままならないでしょうね。人材育成。
  
  非違の内訳としては、海外税制絡みは次のとおり。
  1 タックスヘイブン対策税制関係 66件
  2 移転価格税制関係    170件
  
 タックスヘイブン対策税制、たくさんの本が出版され、OECDからも、新たな対策方針が確か発表され、企業にいろいろ要求するようになって、世界的な課税強化が話題とないるところですが、以外と少ないというのが実感です。
 
 ちなみに、移転価格税制の事前相談の申出は、115件だったようです。


 あと、連結法人の実地調査は、145件。
 うち非違発見は、138件。

 これは、調査をする税務職員の方もよりスペシャリストな人材が必要なのでしょう。
 ちなみに、私が関西学院大学のアカウンティングスクールに通っていたとき、連結会計の講義を取りましたが、試験に落ちて単位がとれませんでした。講義は、受けていて、ふんふんと理屈はわかるのですが、試験時間内ですばやく計算ができませんでした。23、24歳の若い学生さんに頼んで個人授業までしてもらったのに。
 税務・会計は、瞬間的に数字をいじれないとその道の仕事は無理だと悟りました。苦い思い出の連結会計。。。
 なので、自分の足らずを知っているつもりなので、税務調査の立会いの仕事をさせていただくときでも、顧問の税理士さんのサポートという、あくまで証拠評価、法律面、また紛争ごととしての税務署との交渉面でのサボートに徹します。


 と、つらつらとプレスリリースのPDFをみて、自身の備忘録がてら書いてきたのですが、書いているうちに何か発見があるかと思ったのですが、特に発見もなく。
 まあ、これらの数字を押さえていたら、いつか思わぬところで何かの役に立つかも。
 得体が知れないと思われがちな税務署・国税局ですが、数字でみたら、こんなもんかということで。
                      (おわり)

*わざわざ沖縄から送っていただいた、沖縄のお店のバームクーヘン。仕事をして、その後もお付き合いいただけるというのは、本当に幸せな仕事です。
 

 
 
 

 



2014年10月31日金曜日

頑張れ、「質問調書」!まだまだ伸びる、はず!



 所属する租税訴訟学会近畿支部の研修に参加してきました。
 「租税不服審査制度改革の意義と今後の課題ー行政不服審査法・国税通則法の改正をふまえて」とのタイトルで、講師は、租税法・行政法で著名な大阪の弁護士、水野武夫先生でした。
 午後6時30分から午後8時20分ほどの約2時間、休みなく、一気に、これまでの歴史を踏まえながら、改正法の解説と問題点の解説等をしていただきました。 
 圧巻の研修でした。

 行政不服審査法改正に伴う、国税不服申立手続きの改正、国税通則法の改正ですが、やはり一番の問題点、骨抜き箇所は、水野先生も指摘されている、改正国税通則法97条の3だと思います。

 なんと!!まさかのびっくり!!
 証拠書類等の閲覧・写しの交付の対象として、国税通則法97条1項1号が除外されている。

 裁決書をいくつも見れば明らかだと思いますが、国税不服審判所の裁決書においては、審判官らが関係者に会って質問した内容を書面化した「質問調書」がよく決定的な事実認定の証拠として用いられているように読めるものが多いです。
 
 弊著でも指摘していますが、ここにおいて、当事者は同席しません。
 審判所の者だけで、問い答えが行われ、審判所の人間が、それを書面としてまとめます。

 民事訴訟法・刑事訴訟法を学べば分かることですが〜つまり、学んだことがない人には分かりにくい〜、反対尋問制度がなぜあるのか、供述の書面化のどこに問題があるのか、そういった数々の危険性を認識して、国税審判所では「質問調書」が作られているのでしょうか。
 つまり、国税不服審判所の職員は皆、訴訟法・証拠法則の知識と理解をもって、「質問調書」を作成しているかどうかということです。

 もしかしたら、ナイフの怖さを知らずにナイフを振りましているかもしれません。ただそれは、国税不服審判所に限らず、税務署職員による税務調査の際の「質問てん末書」といった書類についても同様です。

 国税不服審判手続きでの「質問調書」が閲覧謄写の対象となったなら、もしかしたら国税不服審判所全体のさらなるレベルのアップに繋がるチャンスとなったのではないか、足らずを知るという機会を、自らの向上の途を自ら閉ざしたのか。
 批判は成長の好機です。
 残念で仕方ありません。
 まあ、プライバシーが、調査の秘密がということなのでしょうけど。まるまる除外する必要はなかったのではないかと思います。
 残念!
                      (おわり)

*去年見た映画、「恋するミナミ」のチケット。写真の場所は、卓球バー。


 

2014年10月29日水曜日

脱税報道から見えるもの〜大切なものは目に見えない

 平成26年10月29日の報道です。
 産経ニュース
 東京の映画製作会社が、平成24年8月期までの5年間に10億円の所得隠し。
 重加算税を含めた追徴税額は約4億円。会社は、修正申告をし既に納付済みとのこと。

 手口とされているのは、次のとおり。

・興行やDVDの販売で得た収入の一部、数億円を申告せず。
・海外での興行収入を簿外口座に入金させて、申告せず。
・映画製作費にかかる経費について、一部を二重計上。

 「同社は「見解の相違もあったが、国税当局の指摘を受け入れた。真摯(しんし)に受け止め、適正な経理、税務処理に努める」としている。」

 とのことです。

 収入の申告をしていなかったことが分かった。
 取引先との契約内容を国税に掴まれたということですね。映画の興行やDVDの販売実数については、反面調査で取引先から掴んだのでしょうか。

 海外での興行収入を入れていた簿外口座が発覚。
 会社で、簿外口座の存在が明らかになる通帳あるいは裏帳簿が発見されたのでしょうか。海外の取引先からというのはなかなか国税も掴むのは難しいかと思います。
 ちなみに、簿外の口座に売上金を入れて、申告していなかったら、弁解は難しく、国税通則法68条1項、仮装隠ぺいありとして、重加算税の賦課決定処分を受けるはやむを得ないと思われます。

 経費の二重計上。
 水増し。これは、自社での単なる帳簿上の処理か。

 この会社は、東京国税局の調査の結果の指摘を受け、見解の相違はあったが、修正申告したようです。いったいどの点でのどのような見解の相違だったのか。
 所得の帰属でしょうか。経費のカウントの仕方でしょうか。
 気になります。

 資本金1000万円、業務内容は次のとおり。



OUR BUSINESS

  1. 映画、テレビ・ラジオ番組、ビデオソフト、コマーシャルソフト、出版物、ゲームソフト、コンピューターソフトの企画、制作、購入、販売
  2. 映画、音楽、ゲームソフト、コンピューターソフトの複製、頒布、賃貸、並びに輸出および輸入
  3. 上記ソフトの著作権、商標権、意匠権の管理および販売
  4. 演劇、演芸、講演会の企画、制作
  5. キャラクター商品の企画、著作権、商標権、意匠権の管理および販売
  6. タレント、音楽家、作家、映画・舞台の監督、演出家および映像技術者等のマネージメント

 報道によれば、25年8月期の売上高は9億円とのこと。

 事実だとすると、5年間で10億円の所得の隠ぺいだとすると、ちょっとやり過ぎだったかも。法人税法違反で社長は刑事告訴されないのでしょうか。
 
  毎日新聞の報道によれば。
 毎日新聞の取材に対し、同社の社長(67)は「(新たに作り直す)リメークをすることもあるので(経理処理を決算期ごとに)締めないのが業界の慣習。あとでまとめて申告するつもりだった。国税局と見解の相違があったが、最終的に指摘に従って修正申告に応じた」と話した。

 この報道が事実とすれば。
 そのような「業界の慣習」が本当にあったとして、それで会計処理して、決算書を作成し、法人税の申告をしていたのでしょうか。
 慣習があったとしても、事業年度、決算の目的からして、売上げを計上しないとかは、リメークの有無に関わらずないような。。。
 申告担当の税理士さんは、何をどう判断したのか気になります。
 会社の経理で不審な点に気づいても、税理士さんの立場って悩ましいようですね。
 言って聞く社長かどうか。

(おわり)

 

2014年10月27日月曜日

税法の世界に対する思い

税法に対する、弁護士としての思いは、2014年7月、日本加除出版社から出版していただいた拙著の「はしがき」と「おわりに」に記したとおりです。
税理士・弁護士のための税務調査の後の不服申立てガイド

一言で言えば。

税務調査、課税処分等の世界、もっと法化される余地がある、ということです。
弁護士の目からみたら、えっ?こんな事実認定してるの?それを税理士さんは、納税者は本当に受け入れているの?といったことです。

しかし、じゃあ、弁護士だけで税務調査の立会い、要は、おかしな調査でおかしな修正申告がされないよにとチェックできるかとういと、それは不可能です。
弁護士業を本業としていて、税理士登録し、法律事務所で申告業務ができますという方がいらっしゃったら、無知の知を知れ、と思います。
知らないことを知らなければ、弁護士でも相続税の申告書の作成の仕事を受けてしまったりするのでしょう。
そういうことです。

しかし、税理士の先生方も、本当に証拠評価や事実認定論を専門的に経験として仕事とされているのか。裁判所でのどのような裁判手続きのもと、どのような心証をとって裁判所で事実認定がされるのか、また、法律の解釈論、先例判決の評価はどう考えるのかといったことは本業から外れているのがほとんどだと思います。

この各専門性の狭間に落ち込んでいるのが、今の日本にいる納税者ではないかと思います。
それが国税審判所での4年間の経験で、抱いた問題意識です。
納税者のために。

そのためには、税理士と弁護士の協働が、対課税庁との場面では不可欠だろう。
それが今の一つの方向性です。

納税者を応援したい、足らずを知る税理士さんを応援したい、
弁護士はあくまで伴走者。

訴訟になったら、税理士は「補佐人」とされていますが、
訴訟の前段階では、弁護士が税理士の「保佐人」であってもいいのではないか。
そうした思いから、徒然と税法周りで、思うこと気づいたことなどを綴っていきます。